一覧に戻る

コラム

インプラント治療を受けた方が高齢になった時に注意すべきトラブルって?

2025/12/6


日本は総人口の約3割が65歳以上という超高齢社会を迎えています。インプラント治療も広く普及し、治療を受けた方が年齢を重ねていくケースは、今後ますます増えていくでしょう。

しかし、「自分が70代、80代になった時、このインプラントはどうなるのだろう?」
「もし将来、介護を受けることになったら、インプラントのケアはどうすればいいの?」
…こういった不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、インプラントと共に年齢を重ねていくうえで考えられる注意点や、そのためにできる備えについて解説します。

高齢になると生じるさまざまなお口の問題

インプラント自体はチタンという丈夫な金属でできているため、インプラントが虫歯になることはありません。しかし、高齢になると以下のような理由からトラブルが発生するリスクが高まります。

お口の中の環境が変化する



年齢を重ねると、身体には様々な変化が現れます。例えば、唾液の分泌量もその一つです。唾液には、お口の中の汚れを洗い流したり、細菌の活動を抑えたりする大切な働きがあります。

しかし、加齢や服用されているお薬の影響で唾液が減ると、唾液の自浄作用が弱まり、細菌が繁殖しやすくなります。

繁殖した口内細菌が原因で引き起こされるのが、これまでもインプラントコラムで多く取り上げてきたインプラント周囲炎です。

インプラント周囲炎は、よくインプラントの歯周病に例えられます。進行するとインプラントを支える骨が溶け、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうことにもなりかねませんから、注意が必要です。

身体機能の低下によってセルフケアが困難になる



年齢を重ねると、身体にも様々な変化が現れます。これまであたりまえにできていたお口のケアが、少しずつ難しく感じられるようになるのもその一つです。

例えば、視力の変化で手元が見えにくくなったり、手指の力が弱まったりすることで、歯ブラシを的確に動かすことが難しくなるかもしれません。

毎日のセルフケアの質が低下してしまうと、お口の衛生状態が悪化し、インプラントの寿命を縮めることにつながります。

認知機能の低下により診察が難しくなる



認知症の方の場合、歯やインプラント、お口の状態を診察しようとしても、「お口を開けてくれない」「手が出てしまう」など、診察自体が難しくなる可能性があります。

そうなると、歯やお口の状態を検査できないため、インプラントのトラブルの有無についても把握が難しくなります。

インプラントの除去が必要な場合であっても処置ができず、炎症の範囲が拡大するようなことも起こり得ます。

高齢化に伴いインプラントに起こりうるトラブル

インプラントはどれくらいもつの?のコラムでも紹介したとおり、厚生労働省によると、インプラントの残存率は10年で90%以上、20年で80%以上と言われています。

インプラントが長持ちするのは大変優れた特長ではあるものの、インプラント治療を受けた方が高齢化するにつれて、インプラントに何らかのトラブルが発生する可能性も高くなります。

インプラント周囲炎



まず挙げられるのが、先ほども出てきたインプラント周囲炎です。

インプラント周囲炎の原因は、プラーク(歯垢)の磨き残しです。歯磨きが不十分、もしくはできなくなることで、インプラント周囲の歯肉が腫れ始めます。

先述のように、進行すると、やがてインプラント周囲の骨が溶かされ始め、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまいます。

インプラントの破損や緩み



インプラントの寿命は長いとはいえ、人工物である以上、長年の使用で壊れたり緩んだりする可能性があります。

例えば、注意して!インプラント治療後は放置すると様々なトラブルが…のコラムでお話ししたように、歯ぎしりや食いしばり、硬いものを噛んだ衝撃で、セラミックなどの上部構造(人工歯の被せ物)が欠けたり、外れたりすることがあります。

このほか、金属疲労を起こして、インプラントの歯根部分であるフィクスチャーや、フィクスチャーと上部構造をつなぐアバットメントが破損することも考えられます。

周りの歯や歯茎を傷つけてしまうことも



インプラント自体に問題が起こらなくても、インプラントが別のトラブルの原因となる可能性もあります。

インプラントの被せ物は非常に硬いため、噛み合う歯が弱った天然歯の場合、その噛み合う歯が欠けたり割れたりすることがあります。

また、認知症の症状などで、無意識に強く噛みしめる癖が出るケースもあります。この場合、インプラントが頬や舌の粘膜を傷つけ、口内炎の原因になります。

高齢になったらインプラントは外した方が良いのか



このようにお話ししてくると、「将来、介護が必要になったらインプラントは外すべきなの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。実は、高齢で要介護状態になったら、もしくはなりそうなら、インプラントは外すべきかどうかの明確な答えはまだありません。

インプラント治療を受けた方が要介護状態になると、インプラントにどのような問題が出るのかという正確なデータはまだないからです。

定期的なメンテナンスを怠らないことが何より大切



そのため、なるべく長くインプラントを使用できることを目指し、インプラントは定期的なメンテナンスが大切!のコラムでお伝えしているとおり、インプラントのメンテナンスを怠らないようにすることや、お身体が不自由になった際は、歯科医師や歯科衛生士がご自宅や施設へ伺う訪問歯科(※)を活用するといった対策がより重要になります。

(※)訪問歯科について詳しく知りたい方は、提携院であるポラリス歯科・矯正歯科訪問歯科での口腔ケアの大切さのコラムをご参考になさってください。

適切な備えでインプラントを生涯のパートナーに



高齢で要介護状態になった場合、口腔ケアや歯科医院での処置が難しくなることで、インプラントのトラブルへの対応が困難になったり、お口の中の粘膜を傷つけたりする可能性が出てきます。

高齢の方へのインプラント治療に際しては、要介護となっても邪魔になりにくい形にする、入れ歯に取り替えやすい形にするなどの対処も検討していく必要があるでしょう。

インプラントオフィス大通では、医療法人社団 千仁会専門医が、豊富な実績と知見に基づき、患者さん一人ひとりのライフステージの変化まで見据えた、インプラント治療のご提案をいたします。

治療を受けた方の高齢化に伴うさまざまな症状にも対応することができますので、ご自身が高齢になった時のことも考えてのインプラント治療をご希望の方は、札幌のインプラントオフィス大通にぜひご相談ください。