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コラム

インプラント手術直後から1週間ほどの間に起こりやすいトラブルと対処法

2025/12/9


インプラント治療は外科手術を伴うため、「術後はどれくらい痛むのだろう?」「もしトラブルが起きたらどうしよう」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

手術が無事に終わっても、麻酔が切れた後の痛みや翌日以降の腫れなど、身体には様々な反応が現れます。

インプラント治療での痛みや腫れの対処法のコラムでお伝えしたように、これらは治癒過程における正常な反応であることが多いのですが、中には早急な対応が必要なトラブルが起こることもあるため注意が必要です。

以前、インプラント治療後のトラブルってどんなもの?のコラムでは、インプラント手術から比較的時間が経過した後に起こるトラブル(インプラント周囲炎や被せ物の破損など)について解説しましたので、今回は、インプラント手術直後から1週間以内に起こりやすい、直近のトラブルにフォーカスして解説します。

インプラント手術直後に起こりやすいトラブルと対処法

インプラント手術後に起き得るトラブルの内容は、直後と数日後では異なります。まずは、手術当日や翌日に起こりやすい代表的な症状と対処法について解説します。

出血



インプラント手術部位からの出血です。手術当日は、うがいをした時などに唾液に血が混じることがよくあります。これは通常の反応ですので、少量の出血であれば過度に心配する必要はありません。

特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固剤や抗血小板剤)を服用されている方は、血が止まりにくい傾向があるので注意しましょう。また、ご自身では気づいていないフォン・ウィレブランド病(VWD:止血に必要な因子が不足して血が止まりにくくなる病気)などの遺伝的な要因で出血しやすい体質の方も稀にいらっしゃいます。

【対処法:ガーゼをあてて噛む】


出血への対処法:ガーゼをあてて噛む


出血が気になる場合は、清潔なガーゼ(なければ丸めたティッシュ)を傷口にあて、グッと30分ほど強めに噛んで圧迫してください。ほとんどの場合、これで血は止まります。もし止まらない場合は、新しいガーゼに交換してもう30分噛んでください。

何度もうがいをすると、せっかく固まった血餅(けっぺい:かさぶたの役割をする血の塊)が剥がれてしまい、再出血の原因になります。うがいは優しく、控えめにしましょう。

もし、上記の方法を試しても溢れるような出血が止まらない場合は、すぐに歯科医院へ連絡してください。

腫れ


インプラント手術直後に起こりやすいトラブル:腫れ


インプラント手術後の腫れは、インプラントの手術に伴う炎症反応によって起こる腫れです。

手術後の炎症反応によって起こる腫れは、手術から24~48時間くらいでピークを迎え、それから引いてきます。

もし、2日以降のほうが腫れが強くなる場合、その腫れは手術以外の原因で起こった可能性が考えられます。

【対処法:濡れタオルや冷却シートで冷却】



腫れや熱感が強い場合は、濡れタオルや冷却シートで軽く冷やすと楽になります。しかし、氷や保冷剤でキンキンに冷やしすぎるのはNGです。血行が悪くなりすぎて、かえって傷の治りが遅くなったり、しこりが残ったりする原因になります。

3日目を過ぎても腫れが引かない、あるいは逆に大きくなってきた場合は、化膿している可能性がありますので、すぐに歯科医院へ連絡してください。

痛み



インプラント手術後の痛みについては個人差があり、痛まない方もいれば、痛みが長く続く方もいます。

ですが、痛みについては処方される鎮痛剤でコントロールできる範囲の痛みがほとんどです。

痛み止めが効かないような痛み、もしくは日が経っても痛みが軽くならず、強くなる場合は、手術後の炎症以外の原因があるかもしれません。

【対処法:痛み止めの薬を服用】



インプラント手術後の痛みは、痛み止めの薬を飲んでいただくことになります。

足りなくなったら、歯科医院で追加処方してもらうか、市販の痛み止めの薬を薬局やドラッグストアでお買い求めください。



手術当日の夜などに、37度台の微熱が出ることがあります。これは外科的な侵襲(手術などにより肉体が傷つくこと)に対する生体反応の一種である可能性があります。

【対処法:安静を保つ】

37度台の発熱で、他に重篤な症状がなければ、水分を摂って安静にしていれば翌日には下がることがほとんどです。

38度以上の高熱が出た場合や、熱が下がらない場合は、手術部位の感染や、インプラントとは別の原因(風邪など)も考えられますので、歯科医院へ連絡し、指示を仰いでください。

数日から1週間以内に起こりやすいトラブルと対処法

では続いて、インプラント手術から1週間ほどの間に起こりやすいトラブルについてお話ししていきましょう。

神経麻痺



下顎のインプラント手術で、稀に起こるトラブルです。詳しくは、インプラント治療で神経が傷つくことがある?のコラムで解説していますが、下顎の中を通る太い神経(下歯槽神経:かしそうしんけい)の近くにインプラントを埋入した際、神経を圧迫したり傷つけたりすることで生じます。

多い症状としては、下唇や顎先の感覚、舌の感覚や味覚が分かりにくくなることが挙げられます。

なお、上顎のインプラント手術でも、ごく稀ですが、神経麻痺は起こりえます。上顎の場合は、上唇や鼻のあたりの感覚が分かりにくくなります。

【対処法:薬物療法や理学療法】



手術当時は、麻酔をしているので神経麻痺と同じような状態になっていますから、神経麻痺が起こっているかどうかを判断することはできません。

翌日になっても痺れているようなら、神経麻痺が起こっている可能性が高いと言えます。

その場合は、薬物療法(ビタミンB12やステロイド、(※)ATP製剤などの投与)やレーザー治療などの理学療法によって神経の修復を促します。

手術後の腫れによる一時的な圧迫であれば、腫れが引くと共に治りますが、インプラントそのものが神経に接触している場合は、インプラントを撤去する再手術が必要になることもあります。

(※)ATP製剤:アデノシン三リン酸製剤。血流や組織を活性化する薬のこと。

上顎洞炎(じょうがくどうえん)



上顎洞炎は、上顎洞(じょうがくどう)という鼻の隣、上顎の奥歯の上、目の下にある頭蓋骨の空洞に起こる炎症です。

詳しくは上顎のインプラントが難しい理由のコラムで解説していますが、上顎の奥歯へのインプラント手術を行う際、上顎洞を覆う粘膜(シュナイダー膜)を傷つけたり、骨を貫通させてしまったりすることで、上顎洞炎が発症するケースがあります。

手術直後は無症状なことも多く、細菌感染が広がるにつれて頬の痛みや圧迫感、黄色い鼻水といった症状が現れ、ようやく異変に気づくというパターンも少なくありません。

【対処法:抗菌薬の投与】



上顎洞炎の対処としては、まずは抗菌薬による炎症の緩和です。ただ、インプラント本体が上顎洞内に迷入(めいにゅう:誤って入り込むこと)してしまったり、粘膜の穴が大きかったりする場合は、薬の服用だけでは改善が見込めないことがあります。

その際は、原因となっているインプラントの撤去や、開いてしまった穴を閉鎖する外科的な処置が必要となるでしょう。

縫合糸の緩み



歯茎を縫い合わせた糸は、通常1週間〜10日後の抜糸までそのままにしておきます。

しかし、舌で触ってしまったり、食事の摩擦で糸が緩んだりすると、縫合糸が取れてしまうことがあります。

【対処法:傷口が開いていれば再縫合を行う】

縫合糸が取れた場合、傷口がすでに塞がっていれば問題ありませんが、傷口が開いてしまっている場合は再縫合が必要です。

糸が垂れている場合は、気になって引っ張りたくなりますが、絶対に自分で切ったり抜いたりしないでください。細菌が入る原因になります。早めに歯科医院で処置してもらいましょう。

感染感染



インプラントを埋め込んだ部分に細菌感染が起こるトラブルも考えられます。

インプラント手術部位から膿が出てきたり、ぶよっとしたやわらかい腫れ方をしたりするようなら、細菌感染が起こっている可能性が高いと言えます。

【対処法:歯科医院での処置】

感染が疑われる場合は、すぐに歯科医院を受診してください。患部の洗浄・消毒を行い、抗生物質を変更または追加投与します。

感染が骨まで広がり、正常なオッセオインテグレーションが起こらず、インプラントが骨と結合しないと判断された場合は、一度インプラントを撤去し、骨が治るのを待ってからやり直すことになります。

不安な症状があれば我慢せずに相談を



今回は、インプラント手術直後から1週間ほどの間に起こりうるトラブルについてお話ししました。

術後直後の出血や腫れ、あるいは時間が経ってから生じる感覚の麻痺や上顎洞炎など、外科処置である以上、リスクはゼロではありません。しかし、これらは適切な処置を行うことで回復が見込めるものです。

放置すると症状が長引く可能性があります。少しでも「おかしいな」と感じたら、速やかに担当の歯科医師へ連絡しましょう。

インプラントオフィス大通は、医療法人社団 千仁会専門医たちが、インプラント治療の豊富な知識と経験に基づき、様々なトラブルにも対応できる体制を整えています。今回お伝えしたようなリスクを抑えるよう努めることはもちろん、万が一の際にも迅速なリカバリーが可能です。

インプラント治療をお考え中で、手術後のトラブルについてご心配やご不安のある方、信頼できる治療を行えるクリニックお探しの方は、札幌のインプラントオフィス大通に、お気軽にお問い合わせください。