インプラントとドライマウス(口腔乾燥症)の関係
2025/10/25
「最近、お口が乾くことが増えた…」
「舌が口の中に張りつくような感じがする…」
「口の中がねばつく気がして、飲み込みにくい…」
もしかしたら、その症状はドライマウス(口腔乾燥症)かもしれません。
ドライマウス(口腔乾燥症)は、虫歯や歯周病の発症リスクを高めることが知られていますが、実はインプラントにとっても大敵です。
唾液には、お口の中の食べカスや細菌を洗い流す作用や、細菌の増殖を抑える作用など、お口の中はもちろん、インプラントを良好な状態に保つための重要な役割があります。ドライマウス(口腔乾燥症)になると、唾液の作用が弱まり、インプラントの寿命を縮める原因にもなりかねません。
そこで今回は、ドライマウス(口腔乾燥症)がインプラントに与える影響と、インプラントを守るための効果的なケア方法を紹介します。
そもそもドライマウス(口腔乾燥症)とは?
トライマウスとは、唾液が減少してお口の中が乾く症状のことで、上でお伝えしたように、口腔乾燥症とも呼ばれています。
唾液が減る原因は一つではなく、実に様々です。代表的な原因としては、加齢による唾液腺の機能低下、仕事や家庭での精神的なストレス、糖尿病や腎臓病といった全身の病気が挙げられます。
また、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群(※)や、服用しているお薬の副作用によって唾液が出にくくなることも少なくありません。
(※)シェーグレン症候群については、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科のお口だけでなく目も乾くなら、シェーグレン症候群かものコラムをご参考になさってください。
ドライマウス(口腔乾燥症)のチェック方法
「もしかして自分もドライマウスかも?」と感じたら、簡単にできるガムテストでチェックが可能です。ガムテストは、ガムを10分間噛み、出てきた唾液をコップに吐き出し、その量を測るものです。
用意するものは、味のついていないガム(テスト用のガムが望ましい)と、唾液を溜めるための小さなカップだけで大丈夫です。
まず、リラックスした状態でガムを10分間噛み続けます。その間に出てきた唾液は飲み込まず、すべてカップに吐き出してください。10分経過したら、カップに溜まった唾液の量を測ります。
もし、この量が10mlに満たない場合は、唾液の分泌量が減っている可能性があり、ドライマウスが疑われます。お口の乾燥が気になる方は、一度チェックしてみましょう。
ドライマウス(口腔乾燥症)がインプラントに与える影響
ドライマウスの状態は、インプラントにとってどのような影響を及ぼすのでしょうか。ここからは、そのリスクについて詳しく見ていきましょう。
唾液の働きが低下する
ドライマウスになると、お口とインプラントを健康に保つための唾液が持つ有益な働きが著しく低下してしまいます。
私たちは普段意識していませんが、唾液はただの水分ではありません。お口の中の環境を整える役割を担っています。
| 洗浄作用 | 食事のあと、お口の中に残った食べカスや細菌を洗い流し、清潔に保つ働きです。この作用が低下すると、インプラントの周りに汚れが溜まりやすくなります。 |
|---|---|
| 抗菌作用 | 唾液にはラクトフェリンやリゾチームといった、細菌の増殖を抑える成分が含まれています。これらが、お口のトラブルの原因となる悪玉菌と戦ってくれるのです。 |
| 傷を治す作用 | 唾液に含まれる成長因子は、歯磨きなどで傷ついたお口の粘膜の修復を早めてくれます。 |
このように、唾液は「天然の洗口液」とも言えるほど多彩な働きで、お口とインプラントを守っています。ドライマウスは、この防御システムを無力化させてしまうのです。
インプラント周囲炎のリスクが高まる
ドライマウスは、インプラントの寿命を縮めるインプラント周囲炎も引き起こしやすくなります。これまでインプラントコラムで多く取り上げてきたように、インプラント周囲炎は、いわばインプラントの歯周病ともいえるものです。
進行するとインプラントを支える顎の骨が溶かされ、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあるので、十分に注意しなくてはなりません。
唾液の減少による悪影響
ドライマウスになると、唾液の洗浄作用や抗菌作用が低下し、口腔内の細菌が増えるようになります。
さらに唾液の修復作用も弱まり、歯茎の腫れや出血といった炎症の治りが悪くなってきます。やがて、歯周病の原因菌の増加と歯茎の抵抗力の低下という2つの悪条件が重なり、インプラント周囲炎が進行するようになります。
このように、唾液の減少は、歯周病の原因菌が増殖しやすく、かつ、炎症が治りにくいという、口腔内の悪い環境を作り出してしまうのです。
ドライマウス(口腔乾燥症)によるインプラントへの影響を緩和する方法
ではここからは、ドライマウス(口腔乾燥症)からインプラントを守るためのポイントを解説していきましょう。
丁寧なセルフケア
ドライマウス対策の基本は、毎日のセルフケアをこれまで以上に丁寧に行うことです。
一番の基本となるのは歯磨きですが、歯ブラシ(電動歯ブラシ)でしっかりと汚れを取り除きつつ、唾液の大切な働きをご自身でも補う意識を持って臨むのが良いですね。
また、インプラントは天然の歯とは少し形が異なります。特に汚れが溜まりやすいのは、インプラントと歯茎の境目、インプラントと隣の歯との間です。
これらの場所は、普通の歯ブラシだけでは磨き残しやすいため、タフトブラシ(毛先が一つにまとまった小さなブラシ)や歯間ブラシといった補助的な清掃用具を併用することをおすすめします。
鏡を見ながら、一本一本確実に汚れを落とすことを心がけましょう。詳しくはインプラントの歯磨き方法と注意点のコラムでお伝えしていますので、ご参考なさってください。電動歯ブラシの使用については、インプラントに電動歯ブラシは使えるの?のコラムで解説しております。こちらも併せてご参照ください。
唾液腺マッサージ
唾液の分泌そのものを促す唾液腺マッサージを毎日の習慣に取り入れることも効果的です。
唾液は、耳の下や顎の下にある唾液腺という器官で作られます。この唾液腺を外から優しくマッサージして刺激することで、唾液の分泌を促進させることができます。
耳下腺(じかせん)マッサージ
耳たぶのやや前、上の奥歯あたりに指をあて、後ろから前に向かって円を描くように優しくほぐします。(10回程度)
顎下腺(がっかせん)/舌下腺(ぜっかせん)マッサージ
顎の骨の内側の柔らかい部分に指をあて、耳の下から顎の先に向かって、数カ所を順番に軽く押し上げるように刺激します。(各5回程度)
食前に行うと食事中の唾液の分泌がスムーズになり、食べ物を飲み込みやすくなる(嚥下が良くなる)効果も期待できます。嚥下(えんげ)については、インプラントと嚥下(飲み込みやすさ)の関係のコラムを併せてご参照ください。
口腔ジェル・口腔保湿剤の使用
セルフケアと並行して口腔保湿剤(※)をうまく活用し、お口の中の潤いを補うことも重要です。口腔保湿剤は、乾燥した口内の粘膜をコーティングして保護し、不快な症状を和らげてくれます。
口腔保湿剤には、主に3つのタイプがあります。
| スプレータイプ | 気になった時にシュッとひと吹きするだけで手軽に使えるのが最大の利点です。外出先での使用に便利ですが、効果の持続時間は比較的短めです。 |
|---|---|
| ジェルタイプ | 指やスポンジブラシで口内全体に塗り広げて使います。保湿効果の持続時間が長く、特に乾燥が強い方や就寝前の使用に適しています。使用前にうがいをしてお口を軽く湿らせておくと、伸びが良くなります。 |
| マウスウォッシュタイプ | 口に含んでクチュクチュするだけなので手軽に使えます。ジェルタイプと組み合わせることで効果的な保湿が期待できます。 |
(※)口腔ジェル・口腔保湿剤については、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方のコラムをご参考になさってください。
メンテナンスをしっかり受ける
ここまでご紹介したセルフケア以上に重要なのが、インプラントのメンテナンスを決して怠らないことです。
お伝えしたように、ドライマウスの方は、インプラント周囲炎のリスクが通常よりも高い状態です。そして、ご自身のセルフケアだけでは、どうしても限界があります。
インプラントのメンテナンスでは、インプラントのお手入れ状況や噛み合わせの状態などをチェックしたり、インプラント周囲の汚れを取り除いたりといった、インプラントを長持ちさせるためのケアを行います。万が一、インプラント周囲炎の初期症状が見つかっても、この段階で対処できれば、重症化を防ぐことも可能になります。
インプラントは定期的なメンテナンスが大切!のコラムでもお伝えしているとおり、インプラントを守るためにも、メンテナンスは必ず受けるようにしましょう。
ドライマウスを防いでインプラントを守ろう
口腔乾燥症によって唾液の洗浄・抗菌作用などが低下すると、インプラントの大敵であるインプラント周囲炎の発症リスクが高まってしまいます。
インプラントを長持ちさせるためにも、「ケアをより丁寧にする」「口腔保湿剤を使う」「メンテナンスをきちんと受ける」などの対策をして、ドライマウスを防ぐようにしましょう。
インプラントオフィス大通では、インプラント治療後のドライマウスに悩む方たちも数多くサポートしてきた実績があります。治療後のメンテナンスにも力を入れており、患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせたきめ細やかなプランをご提案します。
インプラントをできるだけ長く快適にお使いいただけるようお手伝いいたしますので、お口の乾燥やインプラントのことでお悩みの方は、ぜひ一度、札幌のインプラントオフィス大通へご相談ください。

