スポーツ選手・格闘技をする方のインプラントの注意点
2025/9/25
スポーツ選手の中には、試合や練習中のケガにより歯を失ってしまう方もいらっしゃいます。特にボクシングや空手などの格闘技をする方や、ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツをする方は、歯を失うリスクが高いでしょう。
歯を失った場合の治療法の一つにインプラントがあります。
これまでインプラントコラムでお伝えしてきたように、インプラント治療は、本物の歯と同じような仕上がり、噛み合わせが得られる優れた治療法です。ただ、スポーツ選手や格闘技をされる方がインプラント治療を受ける場合には気を付けておいてほしいことがあります。
今回は、スポーツ選手や格闘技選手の方がインプラントを選んだ時の注意点についてご紹介します。最高のパフォーマンスを続けるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
スポーツ選手や格闘技をする方が歯を失うとどのような影響が出る?
まず、噛み合わせが身体能力とどのように関わっているのかご説明しましょう。噛み合わせが正しくないと、以下のような問題が生じることがあります。
筋力の発揮が不十分になる
奥歯で食いしばる力は、全身の筋肉が連動して大きな力を生み出します。しかし、歯が1本でも欠けていると力が効率良く伝わらず、本来持っているはずの筋力を発揮しにくくなります。
身体のバランスが不安定になる
噛み合わせのズレは、顎の位置を微妙に変化させ、頭部の傾きや体全体の重心のブレにつながります。
このわずかなズレが体幹の不安定さやフォームの乱れを招き、プレーの精度に影響を与えることも少なくありません。
ケガのリスクが高まる
身体のバランスが崩れたままプレーを続けると、筋肉や関節に偏った負担がかかりやすくなります。その結果、本来であれば防げたかもしれないケガを引き起こす原因にもなり得ます。
スポーツ選手や格闘技をする方がインプラント治療を受ける際の注意点
スポーツ選手が失った歯をそのままにしておくのは、上述のようなハンディキャップを背負い続ける状態とも言えます。この問題を解決する方法としてインプラント治療は有力な選択肢ですが、アスリートの場合は、以下の点に注意しなければなりません。
打撲
ラグビーやアメフト、ボクシングや空手といったコンタクトスポーツは、顔面部への直接的な衝撃を受ける可能性が高く、注意が必要です。また、野球、サッカー、バスケットボールなどの球技においても、ボールや選手との接触によるリスクはゼロではありません。
転倒や事故時に顔面部を打撲すれば、インプラントに強烈な力が加わる可能性があります。インプラントに強い衝撃力が加わると、インプラントの上部構造(人工歯)が壊れる原因になるだけでなく、インプラントが折れたりインプラント自体が抜けたりするかもしれません。
こうした偶発的な事故は、インプラントの寿命を縮める大きな要因となるため、事前の対策が必要です。
食いしばり
スポーツをしていると、多くの方が無意識に食いしばりを起こしています。重量挙げのように、誰かと接触することはなくても、歯を強く噛みしめるスポーツは注意が必要です。
食いしばると力を発揮しやすくなりますが、インプラントにとっては悪影響が出ます。
食いしばりが続くとインプラントに強い力が加わり続けるので、上部構造が破損したり、インプラントと骨の結合状態が壊れたりすることがあります。
インプラントと競技生活を両立させる3つのポイント
スポーツ選手の方がインプラント治療を受ける際は、以下のような点に注意するのが大切です。
マウスガードを使う
インプラント治療を受けた方は、運動や試合をする時にはスポーツ用のマウスガードを使うことを推奨します。スポーツ用マウスガードは、上顎の歯全体を覆うような形をしており、プレー中の衝撃から歯や顎を守るための装置です。
このスポーツ用マウスガードには、歯科医院で作ってもらうタイプと、ご自身でお湯を使って合わせる市販のタイプがあります。
市販品のマウスガードは、手軽に入手できるのですが、適合が良くないとプレー中にずれたり、呼吸がしにくくなることも多いというデメリットもあります。一方、歯科医院で作るマウスガードは、しっかりと歯型を取って作る、いわばオーダーメイドなので歯にきちんとフィットします。
そのため、よりハードなスポーツをする方や、自分にピッタリの製品が欲しいという方には、歯科医院で作るマウスガードの方が、使用中の違和感も少なく、効果的に衝撃力を受け止めてくれるのでおすすめと言えるでしょう。
治療時期はシーズンオフに
インプラントコラムで多く取り上げてきたように、現代のインプラント治療は、インプラントと骨が結合するオッセオインテグレーションという現象を応用しています。このオッセオインテグレーションにより、インプラントと顎の骨がしっかりと結合するには3~6ヶ月くらいかかります。
そのため、インプラントと顎の骨の結合が進む期間は、インプラントに強い衝撃や負担がかからないよう、できる限り安静にしていなければなりません。もしインプラント治療を受けるなら、競技のシーズンオフ期間を選ぶことをおすすめします。
定期的なメンテナンスを必ず受ける
インプラント治療は、上部構造を装着すれば完了なのですが、注意して!インプラント治療後は放置すると様々なトラブルが…のコラムでお話ししたとおり、それ以降、メンテナンスフリーというわけではありません。
インプラントは定期的なメンテナンスが大切!のコラムで解説したように、インプラントを長持ちさせるためには、治療後も定期的にメンテナンスを受ける必要があります。インプラントのメンテナンスでは、インプラントのクリーニングのほか、噛み合わせのチェックも行います。
前述のとおり、強い食いしばりはインプラントにとって有害です。食いしばりを続けると歯が移動して噛み合わせが変わり、インプラントや噛み合わせている歯にダメージが加わることがあります。
特にスポーツ選手や格闘技をする方は、食いしばりによるリスクが高くなるので、メンテナンスを受けて噛み合わせの状態をチェックしてもらい、必要に応じて調整を受けるようにしましょう。
インプラントと競技人生を両立させるために
今回は、格闘家を含むスポーツ選手がインプラントを選ぶ際の注意点についてお話ししました。お伝えしたように、インプラントは失った機能を取り戻すための有効な選択肢ですが、アスリートならではのリスクも伴います。
特に、格闘技やサッカー、ラグビーなどの球技をしている方は、お口のあたりを打撲する機会が多いため、必ずスポーツマウスガードなどを使ってインプラントを守るようにしましょう。
インプラントは、正しい知識と適切なケアがあれば、アスリートの競技人生を支える力強い味方になってくれますが、くれぐれも自己判断は禁物です。最高のパフォーマンスを続けるために、まずはインプラントとスポーツに詳しい歯科医院へ相談することから始めましょう。
インプラントオフィス大通では、スポーツをされる方の歯に関するお悩みやご質問にも医療法人社団 千仁会のインプラント専門医が丁寧にお答えいたします。綿密なカウンセリングを通じて、一人ひとりの競技特性やライフスタイルに合わせた対処法をご提案しますので、札幌でインプラント治療をお考えの方は、インプラントオフィス大通にどうぞお気軽にお問い合わせください。