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コラム

インプラント手術後の味覚変化や違和感はなぜ起こる?

2025/9/26


「インプラントにしたら味覚が変わってしまうの?」
「インプラントを入れて金属の味がしたらどうしよう」
そんな不安をお持ちではありませんか?

インプラントオフィス大通では、長くインプラント治療を手がけている中で、「インプラントにしてから、何でも美味しく食べられるようになった!」という喜びの声をいただくことがほとんどです。しかし、まれに味覚の違和感を感じるというケースも見受けられます。

では、その違いはどこから生まれるのでしょうか?そこで今回は、インプラントと味覚の関係について解説します。

インプラントで味覚が変わることはない



まず結論からお伝えすると、インプラントが味覚に直接影響を及ぼすことは基本的にありません。

私たちは、主に舌の表面にある味蕾(みらい)という小さな器官で、食べ物の味を感じ取っています。この味蕾は舌だけでなく、上顎の天井部分(軟口蓋)や喉の入り口付近などにもありますが、中でも多いのが舌で、1万個くらいの味蕾があると言われています。

味蕾は飲食物に含まれる化学物質を検知し、その情報を脳に送ることで、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味といった基本的な味覚を感じ取ることができます。

味蕾はインプラント治療には関係しない



インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むもの。上述のとおり、味蕾は、舌や上あごの粘膜といった柔らかい組織に存在しますが、インプラントを埋め込む顎の骨の中に味蕾はありません。

手術によって味蕾が直接傷つくことはなく、インプラント治療そのものが味覚を損なう可能性は低いと考えられています。

インプラント治療で「食べ物が美味しくなった」と感じる3つの理由

お話ししたように、インプラントが味覚に影響を与えることはありません。では、インプラント治療を受けた後に味覚に変化が出るのはどうしてでしょうか?

冒頭でも触れたとおり、当院でも「味覚が良くなった」というお声を多くいただきますが、食べ物を美味しく感じるようになる理由としては、次のようなことが考えられます。

自分の歯のようによく噛めるようになる



食べ物は、よく噛むことで唾液と混ざり合い、素材本来の味や香りが引き出されます。

ご自身の歯でずっと食べ物を噛めるのが理想ですが、もし自分の歯を失ってしまった場合、治療の選択肢としては、インプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?のコラムで解説したとおり、入れ歯やブリッジ、インプラントが候補に挙がります。

この中で、入れ歯は上手に作っても普通の歯の30~40%くらいしか噛めないと言われています。ブリッジは天然歯を支えにしているので、入れ歯よりよく噛めますが、力がかかりすぎると支える歯の負担が大きくなるので、やはりブリッジも天然歯ほどは強く噛むことができません。

一方、インプラントは顎の骨に直接固定されるので、天然の歯とほぼ同等の力(咬合力)で噛むことができます。そのため、食物の旨味成分も出やすくなり、味を美味しく感じやすくなります。

味蕾が食物に多く触れるようになる



先述のように、味を感じる味蕾は、舌だけでなく上顎の天井部分にもあります。上顎を大きく覆うタイプの入れ歯を使用していると、この味蕾がプラスチックで覆われてしまい、食べ物の温度や風味を感じにくくなります。

インプラントにすることで、入れ歯による覆いがなくなり、味蕾がより多く食物に触れるようになります。これによって、食べ物本来の温かさや風味を感じることができ、「味がよく分かるようになった」と実感される方が多くいらっしゃいます。

もし、現在ご使用中の入れ歯をインプラントに変更したいとお考えの方は、以下のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参考になさってください。

唾液の分泌が促される



食べ物をしっかりと咀嚼するほど、より多くの唾液が分泌されるようになります。

唾液には、アミラーゼリパーゼなどの消化酵素が含まれています。アミラーゼはデンプンを糖類に分解する働きをもった酵素、リパーゼは脂肪を分解する酵素です。

スムーズな消化吸収のためには、しっかりと唾液が分泌され、これらの酵素の働きも活発であることがポイントになりますが、インプラントで噛む機能が回復すると、唾液の分泌量が増加し、消化酵素も増えるので、味覚や消化の面で大変良い影響があります。

例えばお米を噛んだ時に、しっかり唾液が出ると、中に含まれるアミラーゼの働きでデンプンが分解され、スムーズに消化されるとともに、お米本来の甘みを感じられるようになるのです。

インプラント後に違和感が出るのはなぜ?

では逆に、インプラント手術後に味覚に違和感があるとお感じになる方は何が原因なのでしょう?理由としては次のようなことが考えられます。

麻酔の影響



舌の感覚や味覚は、舌神経(ぜつしんけい)や鼓索神経(こさくしんけい)といった神経によってコントロールされています。顎の奥歯周辺には、これらの神経が走行しており、中でも舌神経は下顎の奥の内側を通り、舌に広がっています。

下顎のインプラント手術では、近くを走る舌神経に麻酔が作用し、一時的に舌が痺れることで、味を感じにくくなることがあります。麻酔の影響による味覚の変化は、舌神経への麻酔効果がなくなると自然に回復します。

インプラント治療時に使用する麻酔や、影響を受ける神経の詳細については、インプラント治療で用いる麻酔と鎮静法と、インプラントによる神経損傷の症状と治療法についてのコラムをご参照ください。

術後炎症



インプラント手術を受けると、腫れや痛みが出ます。これを術後炎症といい、腫れは手術から24~48時間でピークを迎え、その後数日かけて引いていくのがほとんどです。

ただ、インプラント手術の部位によっては、この術後炎症が舌神経の近くまで広がることがあり、腫れによって神経が圧迫されるケースがあります。すると、神経の働きが低下するため、味覚も鈍くなってしまうことがあるのです。

術後炎症による味覚の違和感は、通常5日〜1週間程度で自然と解消されます。術後炎症について詳しく知りたい方は、インプラント治療での痛みや腫れの対処法のコラムで解説しておりますので、併せてご参考になさってください。

ガルバニー電流の発生



ガルバニー電流とは、お口の中に銀歯などの異なる種類の金属がある場合に、唾液を介して微弱な電流が発生し、ピリピリとした刺激や金属の味を感じる現象です。

現在、インプラントの主流素材であるチタンは、生体親和性が高いため、ガルバニー電流を発生させることはありません。

しかし、過去に治療した銀歯などが多く入っている場合や上部構造(人工歯の被せ物部分)に銀歯を選択した場合、ごくまれにこの現象が起こる可能性があります。

インプラント治療で豊かな食生活を送ろう



今回はインプラント手術後の味覚の変化についてお話ししました。お伝えしたように、インプラント自体は味覚に直接影響することはありません。

ただし、治療で用いる麻酔や術後の腫れが、一時的に味覚へ影響を及ぼす場合があります。これらは時間とともに解消されていくことがほとんどです。

多くの方が、「しっかり噛めるようになる」「入れ歯が不要になる」「唾液の分泌が促される」といった変化により、以前より食事が美味しくなったと実感されています。

インプラントオフィス大通は、インプラント治療の豊富な知識と経験に基づいて、患者さんがご自身の歯のように噛むことができ、豊かな食生活を送れるようサポートいたします。

味覚のことはもちろん、インプラントに関してご不明な点やご質問があれば、どのようなことでも、札幌のインプラントオフィス大通にお気軽にご相談ください。