インプラントロケーターとは?
2025/6/9
全ての歯を失ってしまった場合、治療の選択肢の一つとして総入れ歯があります。
総入れ歯は保険診療で作ることもできますが、インプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?や今の入れ歯をインプラントに変えられる?のコラムでもお伝えしたように、ご自身の歯と比べると、噛む力や食事の際の感覚に違和感を感じる方がいらっしゃいます。
また、食事や会話の途中で外れてしまうなど、日常生活でご不便を感じるケースも少なくありません。
このような総入れ歯の噛み合わせや、安定性に関するお悩みをお持ちの方にご紹介したいのが、今回のテーマであるインプラントロケーターです。
インプラントロケーターについて
インプラントロケーターは、コラムでもご紹介したインプラントオーバーデンチャー(※)に使用されるアタッチメント(連結装置)の一種で、入れ歯と組み合わせて使用します。
※インプラントオーバーデンチャーは、入れ歯をあごの骨にしっかりと固定するために用いられるインプラントを指します。
インプラントと聞くと、ほとんどの方は、失った歯の代わりに天然の歯に近い見た目の人工歯を装着する治療をイメージされるかもしれません。
しかし、インプラントロケーターはそのような一般的なインプラントとは異なり、人工歯の部分がありません。その代わりに、先端にボタンのような形をした小さな金具(ロケーター)が取り付けられています。
インプラントロケーターの構造
インプラントロケーターは、上の図のように、インプラント側に取り付けられたロケーターと、入れ歯側の留め具を連結させることで機能する構造をしています。
ロケーター
顎の骨に埋め込まれたインプラント体に装着される部品です。お口の中に少しだけ頭を出す凸状(でっぱった形)をしています。入れ歯側の留め具
入れ歯の裏側に埋め込まれる部品です。内側に専用のキャップが装着されており、これがロケーターとしっかりはまることで、入れ歯を固定する仕組みになっています。
インプラントロケーターの特徴
インプラントロケーターは、入れ歯がずれたり外れたりするのを防ぎ、安定した状態でしっかり噛めるようにすることを目的とした装置です。
お伝えしたように、インプラントロケーターは総入れ歯と組み合わせて機能しますが、埋入するインプラントは2本程度と、比較的少ない本数で対応できるのが特徴です。
インプラントロケーターとオールオン4の違い
歯をすべて失った方へのインプラント治療法として、インプラントロケーターの他に、インプラントオフィス大通でも提供している、オールオン4という選択肢もあります。
オールオン4は、4~6本程度と比較的少ない本数のインプラントを用いて、お口全体の噛み合わせを回復させる治療法です。インプラントに固定式の連結された人工歯を装着します。
一般的な入れ歯に見られる床(しょう:ピンク色の部分)がなく、インプラントへしっかりと固定するため、ご自身で取り外すことはできません。
そのため、オールオン4は装着時の違和感が少なく、ご自身の歯に近い自然な見た目が期待できるというメリットがありますが、一方で、インプラントロケーターを用いた治療と比較すると、費用が高くなる傾向があります。
オールオン4の詳しい特徴やメリット・デメリットは、オールオン4(All-on-4)とその8つの利点のコラムでも紹介していますので、併せてご参考になさってください。
インプラントロケーターのメリット
入れ歯の安定性が向上する
特に下あごの入れ歯は、食事の際などに動きやすく、安定しにくいことがあります。そのため、入れ歯安定剤が手放せないという方もいらっしゃいますが、安定剤を使用しても、完全に固定するのは難しい場合も多いでしょう。
インプラントロケーターを用いると、インプラントが入れ歯をしっかりと支える土台となるため、入れ歯のぐらつきが抑えられ、以前よりもしっかりと噛めるようになります。
骨の安定化も期待できる
顎の骨は、歯があるうちはしっかりと保たれていますが、歯が失われると、歯を支える役割がなくなり、骨は少しずつ減っていきます。
インプラントロケーターを埋め込むことで、その部分の骨には、インプラントを支えるという新たな刺激が加わります。これにより、骨の吸収を抑える効果も期待できます。
顎の骨が痩せてしまうと、入れ歯の安定性はさらに低下してしまうため、骨の状態を維持できることは、インプラントロケーターの大きなメリットの一つに挙げられます。
通常のインプラントよりも負担が少ない
もし、総入れ歯の方がすべての歯をインプラントで補おうとすると、多くの本数のインプラントを埋め込む必要(※)があり、それに伴い、治療期間も長くなりますし、身体的な負担も増えてしまいます。
※インプラントの埋め込み可能な本数については、インプラントは何本までなら入れられる?のコラムをご参照ください。
インプラントロケーターでは、埋入するインプラントは2本程度で済みますので、手術に伴う痛みや腫れを比較的少なく抑えられ、治療にかかる費用も少なくできます。
お手入れが比較的簡単
インプラントロケーターは、固定式のインプラントとは異なり、入れ歯と連結させて機能します。そのため、インプラントロケーターの場合、入れ歯部分は取り外せますので、お手入れが簡単です。
入れ歯を小さくできる可能性がある
通常の入れ歯は、歯茎の粘膜で支える構造をしています。ですから、広い面積で歯茎に接することで安定性を高め、噛む力を分散させるように設計されています。
しかし、その分、入れ歯自体は大きくなってしまうので、お口の中での違和感につながることもありました。
インプラントロケーターは、インプラントが入れ歯の支えとなるため、粘膜で支える必要のある面積を減らすことができます。
インプラントロケーターのデメリット
入れ歯より多くのメリットがあるインプラントロケーターですが、デメリットがないわけではありません。
外科手術が必要
通常の入れ歯治療は、外科処置が必要となることはほとんどありません。
それに対して、インプラントロケーターは顎の骨にインプラントを埋め込むため、外科手術が必要です。
保険診療の入れ歯より高価
通常の入れ歯は、健康保険が適用される範囲で作製できるため、費用を比較的抑えることが可能です。
一方、インプラントロケーターを用いた治療は自由診療(保険適用外)となります。そのため、保険適用の入れ歯と比べると、治療にかかる費用は高くなります。
治療期間が長い
保険診療で作製する通常の入れ歯は、型取りから完成まで4~5回程度の通院で、おおむね1ヶ月前後で仕上がることが多いでしょう。
これに対し、インプラントロケーターの場合は、埋め込んだインプラントとあごの骨がしっかりと結合するオッセオインテグレーションを待つ期間が必要です。
そのため、治療を開始してから入れ歯が装着できるようになるまで、一般的に3~4ヶ月程度の期間を要します。
総入れ歯でお悩みの方はインプラントロケーターも選択肢に
今回は、インプラントで入れ歯を連結させるインプラントロケーターについてお話ししました。
インプラントロケーターは、入れ歯の安定性を向上させる優れた治療です。必要なインプラントの本数も2本程度と少ないため、インプラント手術後の痛みや腫れも軽く、治療費も抑えることができます。
ただし、保険適用の入れ歯と比較すると費用がかかり、治療にかかる期間も長くなる傾向がありますので、その点は考慮しなくてはなりません。
インプラントオフィス大通では、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、最新の設備のもと、様々なインプラント治療に対応しております。インプラントロケーターのほか、オールオン4による治療も行っておりますので、総入れ歯でお悩みの方は、札幌のインプラントオフィス大通に、 どうぞお気軽にご相談ください。