インプラント治療後にしみる…これって知覚過敏なの?
2025/10/3
「時間をかけてインプラント治療を終えたのに、なぜか歯がしみる」
「インプラントを入れてから、冷たいものを飲むと歯がキーンと痛む」
「もしかして治療の時に何かあったのかしら…」
インプラント治療後、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方はいらっしゃいませんか?
歯がしみる症状が出ると不安を覚えてしまいますよね。最初に結論から申し上げると、インプラントには痛みを感じる神経が存在しないため、知覚過敏になることはありません。
ではなぜ知覚過敏を覚えるのでしょうか。今回は、インプラント治療後に歯がしみる本当の原因と、症状別の対処法について解説します。
そもそもインプラントは「知覚過敏」にならない
冒頭でお伝えしたとおり、人工物であるインプラントが天然歯のように「しみる」、つまり知覚過敏を起こすことはありません。
その理由を理解するために、インプラントの構造と天然歯の違いを見てみましょう。
天然歯の構造
私たちの天然歯は、外側からエナメル質、象牙質、歯髄(しずい)という3層構造になっています。
エナメル質 | 歯の一番外側を覆う、体で最も硬い組織。 |
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象牙質 | エナメル質の内側にある組織。象牙質には「象牙細管(ぞうげさいかん)」という無数の細い管が通っており、これが神経(歯髄)につながっています。 |
歯髄(しずい) | 歯の中心部にある、神経や血管が集まった組織。 |
歯の神経(歯髄)は、硬いエナメル質と象牙質によって外部の刺激から守られています。しかし、歯ぎしりや強すぎるブラッシングなどでエナメル質が削れたり、歯周病の進行で歯ぐきが下がって象牙質が露出したりすると、状況は変わってしまいます。
露出してしまった象牙質にある象牙細管(ぞうげさいかん)を通じて、冷たい飲み物や歯ブラシの毛先といった刺激が、内部の神経へ直接伝わってしまうのです。これが知覚過敏の正体であり、歯がしみたり痛みを感じたりするメカニズムです。
インプラントの構造
一方、インプラントは以下の3つのパーツから構成される完全な人工物です。
インプラント体 フィクスチャー | 顎の骨に埋め込む人工歯根(チタン製)。 |
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アバットメント | インプラント体と人工歯をつなぐ土台。 |
上部構造 (人工歯) | セラミックなどで作られた歯の部分。 |
ご覧の通り、インプラントには刺激を感じる神経(歯髄)が存在しません。 そのため、インプラント自体が刺激に反応して「しみる」ことは原理的にあり得ないのです
インプラント治療後に知覚過敏はなぜ起こる?
アイスを食べるとキーンと歯がしみる、歯ブラシの時に歯が痛いなど、知覚過敏は不快な症状が多いものですよね。
では、なぜインプラント治療をきっかけに、知覚過敏かと思うような症状が出るのでしょうか?その答えは、インプラントに隣接する天然歯にあります。
外科手術にともなう一時的な影響
インプラントを顎の骨に埋め込む際、手術の振動や熱が隣の天然歯の神経に伝わり、一時的に過敏な状態になることがあります。
噛み合わせの変化による負担
天然の歯には、歯根膜(しこんまく)という薄い膜があります。歯根膜にはクッションのような役割があり、噛んだ時の力を吸収・分散してくれます。
一方、これまで様々なインプラントコラムでお伝えしてきたように、インプラントにはこの歯根膜が存在しません。そのため、インプラントの高さや形が合わないと、隣の天然歯に負担がかかり、知覚過敏の症状を引き起こす場合があります。
歯肉退縮(しにくたいしゅく)
インプラントと天然歯の境目は、構造的に汚れがたまりやすい箇所です。清掃が不十分だと、隣の天然の歯が歯周病になり、歯ぐきが下がってしまう症状(※歯肉退縮)が起きることがあります。
歯茎に覆われていた天然歯の根の部分は、象牙質が露出しているため、少しの刺激でもしみやすくなります。
※歯肉退縮についてより詳しく知りたい方は、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の歯茎が下がる原因は?対策はどうする?のコラムをご参照ください。
歯ぎしりや食いしばり・強いブラッシング圧
歯ぎしりや食いしばり(※)、強すぎる力での歯磨きは、歯の表面を覆う硬いエナメル質を摩耗させたり、目に見えない細かなヒビを入れたりする可能性があります。それによって、外部からの刺激が歯の神経に伝わりやすくなり、知覚過敏につながります。
そのほかにも、炭酸飲料や柑橘類、お酢などを頻繁に口にすると、歯の表面が溶ける酸蝕症(さんしょくしょう)を引き起こし、知覚過敏の原因となることもあります。また、ホワイトニングなどで使用する薬剤が、一時的に歯にしみる症状を引き起こす場合があります。
※歯ぎしりや食いしばりによる影響の詳細については、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科の歯ぎしりによる弊害のコラムをご参照ください。
原因別!知覚過敏へ対処法
知覚過敏の症状があるときは、まずは冷たいものや熱いものなど、強い刺激を避けるように心がけましょう。一時的な症状であれば、刺激を控えることで次第に落ち着くこともあります。
ただし、症状が長引いたり、痛みが強かったりする場合は、別の原因が隠れている可能性も考えられます。原因が特定できれば、それに応じた的確な治療を行うことが可能になります。
噛み合わせが原因の場合
被せ物(上部構造)の形や高さを調整し、歯に負担がかからないようにバランスを整えます。
その他の上部構造のトラブルについては、インプラント治療後のトラブルってどんなもの?対処法は?のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参考になさってください。
歯周病や歯肉退縮が原因の場合
クリーニングや歯石除去を行い、歯周病の進行を食い止めるようにします。また、露出した歯根には、しみ止めの薬を塗布したり、樹脂でコーティングしたりする処置も行います。
ただし、症状が強い場合は、歯の神経の治療(根管治療)が必要になることもあります。
インプラントの埋入位置自体に問題がある場合
最も深刻なケースですが、噛み合わせ調整などで改善が見込めない場合は、インプラントの上部構造を作り直して再装着したり、場合によってはインプラントの再手術を検討することもあります。
インプラントは神経がないため知覚過敏にはならない
再度お伝えしますが、インプラントは神経のない人工物なので、それ自体が知覚過敏を起こすことはありません。もし歯がしみる症状がある場合、その原因は手術による一時的な影響や、噛み合わせの変化、隣接する天然歯の歯周病などが考えられます。
一時的な症状であれば安静にすることで改善することもありますが、痛みが続いたり強くなったりする場合は、放置せず歯科医師に相談してください。
また、インプラントは定期健診での咬合チェックは欠かせません。もし、天然歯のみが強い力を負担していた場合、天然歯に知覚過敏の症状が出ることもあるので、インプラントは定期的なメンテナンスが大切!のコラムでお話ししたように、インプラントの方は必ずメンテナンスを受けましょう。
インプラントオフィス大通では、治療だけでなく、その後のインプラントのメンテナンスも重視しています。患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせた丁寧なケアを提供し、インプラントをできるだけ長く快適にお使いいただけるようサポートいたしますので、ぜひ札幌のインプラントオフィス大通までお問い合わせください。