奥歯のインプラント治療~そのメリットと難点は?
2025/5/20
失われた歯が持っていた機能や外観の回復を目的とする治療法はいくつかありますが、その中でも高いレベルで回復できる治療がインプラントです。
提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科のコラムで、それぞれの歯の種類や役割について解説しましたが、奥歯(大臼歯)は、食べ物をすりつぶしたり、噛み合わせの土台にもなる大切な歯です。
もしそんな奥歯を失ってしまったなら、インプラントは有力な選択肢になると言えるでしょう。
ただ、奥歯のインプラント治療には多くのメリットがある反面、難点もあります。そこで今回は、奥歯の治療にインプラントを選ぶことのメリット、治療するうえで知っておくべき注意点などを解説します。
奥歯のインプラント治療のメリット
天然歯に近い感覚でしっかり噛める
冒頭で触れたように、奥歯の重要な役割の一つは、食べ物を細かく噛み砕くことです。インプラントは、オッセオインテグレーションによって顎の骨に直接固定されるため、天然歯に近い感覚でしっかりと噛むことが可能になります。
インプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?のコラムでお伝えしましたが、入れ歯の場合、噛む力が制限されることがあります。また、ブリッジは入れ歯よりもしっかり噛めますが、支えとなる歯に負担がかかるため、インプラントほど強い力で噛むことは難しい場合があるでしょう。
しっかりと食べ物を噛めることは、インプラントならではの大きなメリットです。
食事も快適に
しっかり噛めると、もちろん食事も快適に、美味しく楽しめるようになります。
入れ歯の場合、食事の際、入れ歯と歯肉の間に食べ物が入り込んでしまうことがありますし、使っているうちに金具が緩んでくると、入れ歯がずれてしまい、痛みを感じることも出てきます。
ブリッジは、人工歯と歯肉の間に食べ物が入り込みやすいのが難点で、この部分にプラークが付着するようになると、ブリッジ周囲の歯肉が炎症を起こすことがあります。
入れ歯やブリッジは、どうしても使用感に難がありますが、インプラントは、食べ物が入り込むことがないですし、ずれることもありません。
歯磨きがしやすい
インプラントは天然の歯に近い形状をしているため、他の歯と同じように歯ブラシやフロスを使ってお手入れできます。
一方、入れ歯は取り外して清掃する必要があり、ブリッジは連結部分の清掃には工夫が必要です。やはり天然歯と同様にケアできるのも、インプラントのメリットと言えるでしょう。
実際のインプラントの歯磨きの仕方については、インプラントの歯磨き方法と注意点や、インプラントに電動歯ブラシは使えるの?のコラムをご参照ください。
他の歯への負担が少ない
インプラントは、失った歯の部分だけで治療が完結するため、周囲の健康な歯に負担をかけません。
これもインプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?のコラムでお話ししましたが、入れ歯は固定するための金具(バネ)をかける歯に負担がかかりますし、ブリッジは土台となる両隣の歯を削らなくてはなりません。
こういった他の歯への負担は、歯の寿命に影響を与えることもあるので、他の歯に負担をかけない、つまり、他の健康な歯に優しいのも、インプラントの大きな利点として挙げることができます。
寿命が長い
インプラントは、10年後の残存率が90%以上と大変長持ちです。快適に、他の歯に負担をかけず、長期にわたって使い続けられるのもインプラントのメリットです。
(参照):厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&A
顎の骨が痩せるのを抑えられる
歯を失うと、その部分の顎の骨は、噛む刺激が伝わらなくなることで徐々に痩せてしまう(吸収される)傾向があります。
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるため、噛む力が骨に伝わり、骨が痩せるのを防げます。
入れ歯やブリッジでは骨が減るのを防げないですし、一度減った骨は元に戻らないので、これもインプラントの大きな利点の一つと言えるでしょう。
奥歯のインプラント治療の難点は?
このように、多くのメリットがある奥歯のインプラント治療ですが、奥歯であるがゆえに難しい部分もあります。
口の開き幅が少なくなる
皆さんも実際にお口を開けてみると分かりやすいと思いますが、口の前方は大きく開き、口の奥の方(喉の方)は前方ほど大きくは開きません。
お口は顎の関節を軸にして開閉するため、より奥の歯になるほど、口の開く幅は小さくなり、インプラント手術の際、器具を操作するためのスペースが狭くなります。
視認性が悪くなる
口の奥は当然見えづらくなります。特に上顎の奥歯は影になりやすいので、見えにくい場所です。
見えにくい箇所の処置は難しくなるのは、お分かりいただけるかと思います。
嘔吐反射が出やすい
お口の中に器具などが入ると、反射的に吐き気をもよおしてしまう現象を嘔吐反射といいます。
この反射は誰にでも起こりうる生理的な反応ですが、特に反射が強く出る方の場合、治療器具がお口の奥に入ることで強い吐き気を感じ、処置を進めるのが難しくなることがあります。
上顎の奥歯をインプラントにする時の注意点
上顎の奥歯をインプラントにする場合は、以下のことに気をつけなくてはなりません。
上顎洞炎(じょうがくどうえん)のリスク
上顎洞(じょうがくどう)とは、上の奥歯のすぐ上、鼻の脇あたりに広がる、骨の中の空洞のことです。この空洞の内側は粘膜で覆われています。
詳しくは上顎のインプラントが難しい理由のコラムで解説しましたが、上顎洞の底の骨の厚みが薄いと、インプラントを埋入する際に上顎洞の粘膜を刺激してしまい、炎症(上顎洞炎)を引き起こす可能性があります。
上顎洞底(じょうがくどうてい)を傷つけるリスク
上顎洞の底の骨が薄い場合、インプラントを埋め込む処置や、骨の厚みを補うための骨造成の際に、意図せず上顎洞の底を貫いてしまう(穿孔:せんこう)可能性があります。
そうなると、インプラントが上顎洞内に落ち込んだり、骨増生剤が上顎洞内に入り込んだりする可能性があるほか、上述の上顎洞炎の原因にもなります。
下顎の奥歯をインプラントにする時の注意点
続いては、下顎の奥歯をインプラントにする場合の注意点について見ていきましょう。
下顎骨(かがくこつ)の形状
下顎骨(下顎の骨)は、前から見ると奥歯のあたりは「ハ」の字のようになっています。
真っ直ぐに長いインプラントを入れると、下顎骨の内側に突き抜けてしまうかもしれないので、気をつけなければなりません。
下歯槽神経(かしそうしんけい)への影響
下歯槽神経は、下顎の骨の中を通っており、主に下唇や顎の皮膚の感覚に関わる重要な神経です。この神経が通っている管(下歯槽管)は、レントゲンやCTで位置を確認できます。
詳しくはインプラント治療で神経が傷つくことがある?のコラムで解説していますが、奥歯へのインプラント治療の際、下歯槽神経を傷つけてしまうと、下顎の先や下唇の感覚が鈍くなってしまいます。
下歯槽神経を傷つけないためには、下歯槽管から十分距離をとっておくことが大切です。
舌神経への影響
舌神経は、舌の味覚などの感覚を司っている神経で、下顎の奥歯の内側を通っています。
こちらはレントゲン写真で見ることはできませんが、もし、奥歯のインプラントを埋める際に、舌神経を傷つけてしまうと、舌の感覚が鈍くなる可能性があります。
奥歯のインプラント治療で後悔しないために
今回は、奥歯のインプラント治療のメリットや治療が難しい理由などをお話ししました。
奥歯のインプラント治療は、天然歯のような安定した噛み心地を取り戻し、食事を快適にするための有効な手段になりますが、奥歯特有の治療の難しさやリスクもあります。
そのため、奥歯のインプラントを検討する際には、十分な知識と経験を持つ歯科医師のもとで治療を受けることをおすすめします。
インプラントオフィス大通は、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、奥歯のインプラントについても、多くの知識と経験のある歯科医院です。トップページでもお伝えしているとおり、複数の医師によるインプラント症例検討会も行い、より患者さんにぴったりのインプラント治療を行えるよう、日々研鑽も欠かしません。
奥歯を失ってお悩みの方や、ご自身の状況に合った治療法を相談したい方は、どうぞお気軽に札幌のインプラントオフィス大通にご相談ください。