バイオインプラントについて~歯根膜再生を目指す次世代治療の研究と実用化の見通し
2026/1/13
これまで多くのインプラントコラムで取り上げてきたように、インプラントは、美しく自然な見た目としっかりした噛み心地を手に入れられるという優れた特長がありますが、「どうしても天然の歯と比べると、噛んだときの感覚がどこか違う」と感じる方もいらっしゃいます。
この違和感は、天然歯と異なり、インプラントには歯根膜がないことが原因の一つに挙げられます。そこで近年注目されているのが、歯根膜を活かすバイオインプラントです。
ただしバイオインプラントは、一般の治療として広く行われている段階ではありません。国内では特定臨床研究(国のルールに沿って行う臨床研究)として、限られた条件で検証が進んでいます。
今回は、バイオインプラントの開発コンセプト、従来のインプラントとの違い、研究の現状や検討する際に知っておきたいポイントについて、解説していきます。
バイオインプラントとは
バイオインプラントとは、歯根膜を介して顎の骨とつながることを目指した新しい発想のインプラントです。
『次世代バイオインプラント』や『バイオハイブリッドインプラント』とも呼ばれ、金属製のインプラントに生体組織を融合させることで、天然の歯が持つ機能を取り戻すことを目標としています。
これも多くのインプラントコラムで解説してきたとおり、従来のインプラントは、顎の骨にインプラント体(フィクスチャー)を埋入し、オッセオインテグレーションによって、骨と直接結合することで安定させます。この状態では歯根膜がないため、噛んだときの感覚や力の伝わり方は天然歯と同じではありません。
バイオインプラントは、この「歯根膜がない」という課題を解決するために開発されました。
公表されている研究では、抜歯した穴に残る歯根膜などの組織を利用し、インプラントの周りに歯根膜を作ることを狙っています。現時点は研究段階であり、効果が確立した治療ではありません。
バイオインプラントが注目されるのはなぜ?
バイオインプラントが注目される背景には、従来のインプラントでは再現しにくい部分を補うという切なる想いがあります。
より天然歯のような噛み心地に近づける
冒頭でも触れましたが、インプラントで「噛めるようになった」と感じる方は多いものの、「天然の歯で噛んでいたときの感覚とは違う」「硬さや柔らかさの微妙な違いがわかりにくい」という声が存在するのも事実です。
上述のとおり、これはインプラントが骨と直接結合しているためです。歯根膜を通じて脳に伝わるはずの感覚情報が得られないので、このような違和感が起きると考えられています。
動物での研究では、歯根膜に近い組織を介して定着したインプラントで、わずかな動きや刺激への反応が確認されており、現在進行中の臨床研究において、人間でも同様の効果が得られるかどうか検証中です。
噛む力を分散させる
インプラントでも歯ぎしりは起こる?のコラムでも解説したように、歯根膜は、いわばクッションのように歯にかかる力を吸収・分散し、歯や骨への衝撃を和らげてくれる効果があります。
一方、従来のインプラントは骨と直接結合しているため、噛む力がダイレクトに骨に伝わってしまいます。もしバイオインプラントが実現すれば、歯根膜を介して噛む力が分散されることで、より自然な力のかかり方になると期待されているのです。
また、歯根膜があれば、天然歯との連結治療(ブリッジのような形で隣の歯とつなげる治療)も実現できる可能性があり、治療の選択肢が広がることも望まれています。
バイオインプラントの注意点と起こりうるリスク
様々な希望が持てるバイオインプラントですが、研究段階の治療では、良い面だけでなく、起こりうることも理解しておくことが大切です。
- 治療した部位で感染が起こる可能性がある
- インプラント周囲の骨が減る可能性がある
- 全身の状態によって治療計画が変わることがある
また、歯根膜の感染防御機能によってリスクが軽減される可能性は期待されていますが、現在のインプラント治療で問題となるインプラント周囲炎がバイオインプラントでも起こる可能性は否定できません。
ほかにも、インプラント周囲の骨が減る可能性や、経過によってはインプラントを取り除いて既存の治療を行うこと、全身疾患や服用中の薬剤の状況により、治療計画が変わることも示されています。
バイオインプラントの実用化はいつ?
では、バイオインプラントはいつ頃一般の治療として受けられるようになるのでしょうか。
日本歯科医学会が2020年に発表した2040年への歯科イノベーションロードマップでは、次のような予測が示されています。
第1期(2020年~2025年)では、天然歯に近い機能をもつ次世代バイオインプラントが開発される。実際に、一般財団法人 脳神経疾患研究所 附属 総合南東北病院とベンチャー企業である株式会社オーガンテックによって2025年2月から臨床研究が始まり、2025年8月には都内でも臨床研究が開始され、この予測はほぼ実現しつつあります。
第3期(2033年~2039年)には、天然歯に近い機能をもつ次世代バイオインプラント治療が一般化すると予測されています。つまり、順調に進めば2030年代後半には一般の歯科医院でも受けられるようになる可能性があるということです。
ただし、実用化までには安全性と安定性の確立、治療技術、治療コストといった課題もクリアしなければなりません。
未来の治療に期待しつつ今の歯を大切にしよう
お伝えしてきたように、バイオインプラントは、歯の根元にある歯根膜の機能を活かし、天然歯に近い感覚を取り戻そうとする治療法です。
現時点では特定臨床研究という、限られた施設で厳格な基準に沿って行われる試験段階にあり、一般的な治療として普及するには、まだ年月を要します。
もし現在、治療が必要な場合は、今選べる治療の中で優先順位を決め、歯科医院できちんと相談し、治療計画を考えるようにしてください。信頼できる歯科医師と納得のいくまで話し合い、現在の歯を可能な限り守り抜くことが大切です。
インプラントオフィス大通では、北海道大学歯学部臨床教授を務める千田理事長のもと、医療法人社団 千仁会の専門医たちが、最新のインプラント治療についても常にキャッチアップしつつ、患者さん一人ひとりの歯や骨の状態に合わせた、最良の治療計画をご提案いたします。
インプラント治療に興味がある方は、無料カウンセリングも実施しておりますので、どうぞお気軽に札幌のインプラントオフィス大通にお問い合わせください。
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