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コラム

骨の減少を予防する『ソケットプリザベーション』とは

2025/12/24


抜歯をすると、歯を支えていた骨は役割を失い、自然と痩せていってしまうのをご存じでしょうか。

歯の周りの骨は歯槽骨(しそうこつ)といい、歯を支える役割を担っています。歯がなくなると、歯を支える歯槽骨は必要なくなり、おおよそ水平方向に3〜4mm、垂直方向に1〜2mm、吸収されて減っていきます。

数ミリ単位では実感が沸かないかもしれませんが、このように歯槽骨が減少すると、インプラントやブリッジなどの治療に悪影響を及ぼすこともあるのです。

そんな時、骨の減少を食い止め、インプラント治療や入れ歯の安定性を高めるための有効な手段となるのが、今回のテーマであるソケットプリザベーションです。

ソケットプリザベーションとは



ソケットプリザベーションは、抜歯した穴(ソケット)を保存・温存する(プリザベーション)治療法を指します。日本語では歯槽骨温存療法(しそうこつおんぞんりょうほう)と呼ばれます。

歯を抜いた後の穴は血液が溜まり、骨と歯肉に変わっていきますが、自然治癒の過程で骨のボリュームはどうしても減少してしまいます。

そこで、抜歯した穴に骨補填材(こつほてんざい)と呼ばれる人工骨や、ご自身の骨などを詰めることで、骨が縮んで減ってしまうのを物理的に防ぐのがこの治療です。

ソケットプリザベーションを行うタイミング



ソケットプリザベーションは、基本的には抜歯と同時に行うのがベストです。

もし抜歯当日に処置ができなかった場合でも、抜歯直後から遅くとも1ヶ月以内であれば効果が期待できます。

ソケットプリザベーションの方法



では、実際にどのような手順で治療が進むのか、抜歯と同時に行う一般的なケースで解説しましょう。

①局所麻酔

まず、抜歯する歯の周囲の歯肉に局所麻酔を行います。これは通常の抜歯と同じ麻酔ですので、術中に痛みを感じることはほとんどありません。

②抜歯

局所麻酔下で抜歯を行います。抜歯後は、抜歯窩(ばっしか:抜歯後に残るくぼみのこと)に残っている膿の袋や、炎症を起こしている組織をきれいに取り除きます。これを掻爬(そうは)といいます。

③骨充填材を詰める

抜歯窩に人工骨やご自身の骨などを充填します。

④抜歯窩の保護

詰めた骨補填材が外に漏れ出ないように、また、細菌の侵入を防ぐために、コラーゲンなどで作られた人工膜(メンブレン)で蓋をします。

⑤縫合

④の処置を行った部分を覆うように、歯肉を糸で縫い合わせて固定します。

⑥抜糸

術後、約1週間〜2週間程度で傷口の状態を確認し、抜糸します。

⑦経過観察

詰めた人工骨がご自身の骨と置き換わり、しっかりと硬くなるまで6ヶ月〜9ヶ月程度の期間を置いて経過観察します。

ソケットプリザベーションのメリット

ソケットプリザベーションによって歯槽骨の減少を防ぐようにすると、以下のようなメリットがあります。

インプラント治療の成功率を高める



インプラント治療を成功させる条件はいくつかありますが、その中でも重要な条件のひとつがインプラント周囲の骨の量です。

インプラントの周囲に骨が十分にないと、ネジの一部が露出してしまったり、細菌感染を起こしやすくなったり、最悪の場合はインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

ソケットプリザベーションで歯槽骨の減少を防げれば、インプラントの周囲の骨の量が確保できるので、手術の成功率を高めることができます。

骨造成が必要なくなる



インプラントの周囲に骨が少ない場合、コラムでもご紹介した骨造成術という骨の量を増やす処置を追加で行うことがあります。

骨造成術は複雑で難易度の高い処置であり、術後の腫れや痛みも大きくなりがちです。

ソケットプリザベーションで歯槽骨の量を保つことができれば、この骨造成術を行う必要もなくなります。

入れ歯の安定感が向上する



「インプラントではなく、入れ歯にするなら関係ないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、入れ歯は歯茎に乗せて噛む力を支える構造(粘膜負担)になっており、この歯肉の形状を決めているのも、その下にある歯槽骨です。

ソケットプリザベーションで歯槽骨を保持すれば、歯茎もしっかりと維持できるようになるため、吸着が良く、きちんと噛める入れ歯を作ることにつながります。

入れ歯についてより詳しく知りたい方は、提携医院であるポラリス歯科総入れ歯についてや、部分入れ歯の種類と特徴のコラムを併せてご参照ください。

審美性を高く保てる



抜歯後に歯槽骨が減ると、それに伴って歯肉も下がります。

例えば前歯を抜歯した後に歯槽骨が減ると、そこに装着するインプラントやブリッジなどの人工歯は、隣の歯と比べて大きく見えるため、バランスが悪くなってしまいます。

一度下がってしまった歯肉を元に戻すのは困難です。

ソケットプリザベーションを行えば、元の骨の状態を維持できるため、歯肉のラインもきれいに保てるようになります。

ソケットプリザベーションの注意点

保険診療の対象外



ソケットプリザベーションは、現在の日本の健康保険制度では認められていない治療法であり、全額自己負担の自由診療(自費診療)となります。

費用は歯科医院によって異なりますが、目安として1箇所あたり3万円〜10万円程度が相場です。これに加え、将来的にインプラント治療などの自由診療を受ける場合は、その費用も加算されることになります。

タイミングが重要



抜歯してから何ヶ月も経過し、すでに骨の吸収が進んでしまった後では、ソケットプリザベーションを行うことはできません。

冒頭でも触れましたが、ベストなタイミングは抜歯からさほど時間が経っていない時です。「とりあえず抜歯して、後にインプラントを考えよう」と放置していると、いざ治療しようとした時にはソケットプリザベーションが行えない…というケースも少なくありません。

ソケットプリザベーションはいつでも受けられる治療ではないという点に注意しましょう。

抜歯の際は歯槽骨の維持も考えるのが重要



今回は、抜歯後に生じる歯槽骨の減少を防ぎ、インプラントや入れ歯治療の成功率を高める処置として有効なソケットプリザベーションについて解説しました。

ただし、ソケットプリザベーションは抜歯と同時、あるいは直後に行う必要があり、タイミングを逃すと効果が期待できません。

インプラントオフィス大通では、インプラントを熟知した専門医が、歯科用CTなどの専用設備による綿密な検査を通じて、抜歯後の患者さんの歯槽骨の状態に合わせたインプラント治療を行います。

これから抜歯を予定している方、抜歯からあまり日が経っていない方などで、ソケットプリザベーションについてご質問やご相談がある方も、札幌のインプラントオフィス大通にお気軽にお問い合わせください。