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コラム

インプラントは子供でもできる?

2025/7/26


「事故やケガで子供の歯が抜けてしまった…」
歯を失うというと大人というイメージがありますが、子供が歯を失うことは決して珍しいことではありません。

歯を失った時の治療法は色々ありますが、その一つとして思いつくのは、当院のインプラントコラムでも常々取り上げているインプラントではないでしょうか。

ただ、結論から申し上げると、成長期のお子様にインプラント治療を行うことは基本的にありません。

今回は、子供のインプラント治療がなぜ適さないのかについて、その理由を解説します。さらに、インプラントが可能になる時期の目安や、成長期に行われる治療法についてもご紹介していきます。


お子さんの歯が折れたり、欠けたりした場合の対処法については、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科歯が折れた、欠けた…そんな時どうする?のコラムをご参照ください。

子供のインプラント治療が行えない理由



インプラント治療は誰でも受けられる?のコラムでも触れていますが、事故や虫歯などで大切なお子さんの歯が抜けてしまった場合、インプラント治療を行うことはありません。その理由は、成長発育にあります。以下でより詳しく解説しましょう。

顎の骨が成長途中であるため

成長期のお子さんは、身体の発達とともに顎の骨の大きさも形も大きくなっていきます。

成長発育のスピードは個人差があり、年とともに遅くなりますが、一般的に男性は20歳頃、女性は18歳頃まで続くとされています。



インプラントは、顎の骨に直接結合して固定する人工歯根です。インプラントコラムでも折に触れて解説してきたように、天然の歯と骨の間には歯根膜(しこんまく)というクッションのような組織があり、歯並びの変化に応じて歯が少しずつ動くことを可能にしています。

しかし、インプラントにはこの歯根膜がないため、一度埋め込むと動かせません。

成長発育に伴い顎の大きさや形が変わっても、インプラントの位置は変わりませんから、成長発育が終わった時に、インプラントの位置がずれて噛み合わせが大きく乱れてしまう原因になってしまいます。

歯並びが変化するため



お子さんの歯は、乳歯から永久歯へ生え替わり、歯の位置も少しずつ変わっていきます。

動かないインプラントが口の中にあると、永久歯が正しい位置に生えるのを妨げたり、隣の健康な歯の歯根に影響を与えたりする可能性が出てきます。

こうした理由から、顎の骨の成長がほぼ完了するまでは、インプラント治療の適用は見送られます。後述しますが、成長が止まったかどうかは、レントゲン写真などを比較して判断します。

インプラント治療が可能になる時期の判断材料

では、インプラント治療は何歳から受けられるのでしょうか?

これには「何歳から」という明確な答えはありません。先ほども触れたように、お子さんの成長発達の状態は個人個人で異なるからです。

体の成長がほぼ完了したかを見極めるために、歯科医院では主に以下の3つの点を参考にしています。

身長の伸び



全身の骨の成長が落ち着いたかどうかは、直近2年間の身長の伸びで推測できます。

もし、0.5cm以内であれば、成長発育はほとんど止まっていると言えるでしょう。保護者の方には、学校などで測定する成長記録をご確認いただくこともあります。

第二大臼歯の状態



第二大臼歯は12歳臼歯とも呼ばれ、中学生頃に親知らずの手前に生えてくる永久歯です。

この歯が完全に生え揃って、その後の一定期間、歯並びに大きな変化が見られなければ、顎の成長がある程度落ち着いてきたと判断できます。

第二大臼歯が完全に生えて永久歯の歯並びが完成した場合は、成長発育が完了したと考えられるでしょう。

顎の骨格の変化



顎の骨格の成長発育については、矯正用のレントゲン写真が参考になります。

セファログラム(頭部X線規格写真)と呼ばれる矯正治療でよく使われるレントゲンは、毎回同じ規格で撮影できるため、骨格の経年変化を精密に比較することが可能です。

1年程度の間隔をあけて撮影した写真を比較し、骨の大きさや形にほとんど変化がなければ、顎の成長は終わったと判断します。

ただし、これらの基準はあくまで目安です。最終的には、インプラント治療を受ける前に必要な検査とは?のコラムで解説したような精密検査の結果をもとに、歯科医師が総合的に診断します。

子供が永久歯を失った場合の治療法は?

事故や虫歯などでお子様が永久歯を失ってしまった場合、どのような治療法があるのでしょうか?歯がない状態を放置すると、隣の歯が倒れ込んできて将来の歯並びに影響を及ぼすことがあるため、適切な処置が必要になります。

成長期のお子さんの場合、主に以下のような選択肢があります。

小児義歯(入れ歯)



子供が永久歯を失った場合の治療法の基本は、小児義歯と呼ばれる子供用の入れ歯が選択肢となります。

入れ歯=高齢者というイメージがあるかもしれませんが、小児義歯は、子供のお口に合わせて作られるものを指します。主に部分入れ歯が用いられ、金属のバネなどを隣の歯にかけて固定します。

小児義歯のメリット

小児義歯のメリットとしては、お子さんの顎の成長に合わせて調整したり、作り直したりすることが容易な点が挙げられるでしょう。

もちろん、ある程度顎の骨が成長して形が変わってくると、調整だけでは対応できないので、入れ歯を作り替えていきますが、一定の条件を満たせば、保険が適用される場合もあります。

なお、お子さんは大人以上に順応性があるようで、入れ歯に対しても、大人以上に早く慣れるケースが多いのも良い点と言えます。

保隙装置(ほげきそうち)



特に奥歯を早くに失った場合に用いられるのが保隙装置(ほげきそうち)です。

これは、後から生えてくる永久歯のためのスペースを確保する装置で、治療というよりは「将来のための場所取り」とイメージすると分かりやすいかもしれません。

この装置によって、隣の歯が倒れ込んでスペースが狭くなるのを防ぎ、永久歯が正しい位置に生えるのを助けます。

ブリッジによる治療を子供に行うことはない



インプラントはブリッジや入れ歯とどう違う?のコラムでも解説しましたが、ブリッジは、失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台にし、橋を架けるように一体型の人工歯を固定する方法です。

ブリッジは健康な歯を削り、接着剤を使って固定するので、成長途上のお子さんには、インプラントと同じ理由で適用できません。

ブリッジで治したい場合も、成長発育が終わるまで待つ必要があり、それまでの間は入れ歯で過ごしていただくことになります。

永久歯を失ったままにすると起こりうること

ここまで、お子さんの永久歯が抜けてしまった場合の対処法について解説してきましたが、もし、抜けてしまった永久歯をそのままにしていると、お口の中や成長にどのような悪影響があるのでしょうか?

歯並びと噛み合わせが悪くなる



歯が抜けたままの空間があると、隣り合っていた歯がそのスペースに倒れ込んできます。また、噛み合う相手を失った反対の歯が、空いた空間に向かって伸びてきてしまいます。

これらの変化が少しずつ進むことで、お口全体の歯並びや噛み合わせのバランスが崩れる原因になってしまうのです。

食べにくくなる



歯がない部分では、食べ物をうまく噛み砕くことができません。無意識に反対側の歯ばかりで噛む癖がつき、片方の顎にばかり負担がかかることになります。

食べ物を十分に細かくできないまま飲み込むと、消化器官への負担にもつながる可能性があります。

発音が悪くなる



歯がないところから空気が漏れるので、発音が不明瞭になってしまいます。無理に発音しようとして、舌の使い方に不自然な癖がついてしまうケースも出てきます。


発音や滑舌のお悩みについては、提携医院であるポラリス歯科・矯正歯科滑舌が悪い?それって低位舌(ていいぜつ)が原因かものコラムをご参照ください。

顎や顔の成長への悪影響

噛み合わせのバランスが崩れると、顎の骨の健やかな成長を妨げる可能性があります。その結果、顔の輪郭が左右非対称になるなど、表情や見た目のバランスに影響が及ぶことも考えられます。

お子様のお口の健康を守るために



今回は、子供にインプラントはできるのかどうかについてお話ししました。

お伝えしたように、お子さんは成長途上にあり、顎の骨の形や大きさ、歯の位置などが変化し続けているので、インプラント治療を行うことはできません。

永久歯を失ってしまった場合は、まず小児義歯などの装置で歯並びや機能を補い、体の成長を見守ることが大切です。

歯が抜けた状態を放置すると、将来の歯並びや噛み合わせに影響が及ぶ可能性がありますから、成長が完了して、インプラントなどの本格的な治療が可能になるその日まで、適切な処置でお口の健康を守りましょう。

インプラントオフィス大通には、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、小児歯科専門のクリニックも運営しておりますので、お子さん一人ひとりのお口の状態と成長段階を丁寧に診査し、将来を見据えた治療計画をご提案することが可能です。

お子さんのお口の健康についてはもちろんのこと、大人の方へのインプラント治療についても、気になることがございましたら、札幌のインプラントオフィス大通にお気軽にお問い合わせください。