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コラム

インプラント治療で使われるエムドゲインという薬剤とは?

2025/8/22


「インプラント治療を受けたいけれど、骨の量が足りないと言われてしまった」
「骨を増やす処置(骨造成)は、なんだか大変そう…」

インプラントを考えている方の中には、こんな風に不安を感じたり、治療を諦めかけている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

インプラントをしっかりと支えるためには、インプラントの周囲に十分な骨が残っていることが重要です。しかし、歯周病が進行したり、歯が抜けたまま時間が経ったりすると、骨は少しずつ痩せてしまいます。

骨を増やすためにさまざまな治療法が開発されており、そのひとつが今回お伝えするエムドゲインという薬剤です。今回は、インプラント治療におけるエムドゲインの効果についてご紹介します。

エムドゲインとは?



エムドゲインとは、歯の周りの組織(歯周組織)が再生するのを助けるジェル状の薬剤のことです。

歯の元になる組織を歯胚(しはい)といいますが、豚の歯胚から作り出されたタンパク質を主成分としています。これは、永久歯が生えてくる時に、歯の周りの組織を作るために働いていた、タンパク質とよく似た成分です。

エムドゲインは、インプラントオフィス大通も治療に採用している、世界的インプラントメーカーであるストローマン社傘下のスウェーデンのビオラ社が開発し、それ以降、世界40カ国以上で使用され、日本でも1998年に厚生労働省の認可を受けています。

歯周組織とエムドゲインの作用



私たちの歯は、歯周組織と呼ばれるものに支えられています。
歯周組織は、以下のような部分で構成されています。


  • 歯肉

  • 歯槽骨(歯を支える骨)

  • セメント質(歯根の表面を覆う硬組織)

  • 歯根膜(セメント質と歯槽骨を結ぶ組織)


エムドゲインを歯周病でダメージを受けた歯に投与すると、失った歯周組織を再生する効果が得られます。

インプラント治療にエムドゲインを用いるとどんな効果がある?

エムドゲインには、骨を作り出す骨芽細胞(こつがさいぼう)や傷を治す細胞などを活性化させる作用があることがわかっています。

この働きは、エムドゲインに含まれる成長因子が関係していると考えられています。この力をインプラント治療に応用すると、以下のような効果が期待できるのです。

腫れや痛みを減らす



インプラント治療での痛みや腫れの対処法のコラムでもお話ししたように、インプラント手術では、歯茎を切開してインプラントを埋め込むため、術後にある程度の腫れや痛みを伴うことがあります。

エムドゲインには、傷の治りを促進する細胞を活性化する働きがあります。手術の際にエムドゲインを塗布することで、歯茎の傷の治りが早まり、術後の腫れや痛みを和らげる効果が期待できます。

抜歯後の骨を再生させる



抜歯すると、歯があった部分に穴が開きます。放っておいても自身の力で骨が作られ、数ヶ月後には穴がふさがりますが、その過程で骨のボリュームが減ってしまうことがあります。

そこで、抜歯と同時に、抜歯後の穴へエムドゲインを混ぜた骨の補填材(人工骨など)を入れる処置を行います。こうすることで、通常よりも早く骨が回復できるうえ、回復時の骨の減少も減らせるのです。

GBR(骨誘導再生法)の作用を促進する



骨造成のコラムでも解説しましたが、GBRとは、Guided Bone Regerationの頭文字をとった言葉で、骨誘導再生法とも呼ばれ、骨の量を増やす治療法を指します。

インプラントの予定部位に骨の量が足りない場合に、人工骨や自家骨などを入れて、その上をメンブレンという人工膜で覆い、保護します。

GBR法を行う際にエムドゲインを併用すると、骨を作る細胞がより活発になり、骨の再生が促進されます。

インプラント治療にエムドゲインを使うメリット

エムドゲインの効果を活用できれば、インプラント治療において、以下のようなメリットが期待できます。

骨を増やせる



エムドゲインに含まれる成長因子が骨を作る細胞を刺激し、GBR法などで移植した骨の補填材ともよく馴染むため、インプラントを支えるための顎の骨を増やす効果が期待できます。

インプラントの安定性が向上する



冒頭でも触れたとおり、インプラントを安定させるためには、それを支える骨が十分にあることが条件です。

エムドゲインを使うと、土台となる骨を増やす効果が期待できるので、インプラントの安定性が高くなるというメリットもあります。

処置が容易



骨が足りない場合は骨造成手術が必要で、これは患者さんにとっても負担になります。

エムドゲインを使う方法なら、インプラント手術と同時にジェルを塗布・注入するだけなので、手術が複雑になったり、術後の痛みや腫れが増したりする心配がありません。

安全性が高い



メーカー発表によりますと、エムドゲインが発売されてから20年ほど経ちますが、その間にアレルギー反応などの重篤な副作用の報告はほとんどないとのことです。

このような安全性の高さもエムドゲインのメリットのひとつです。

エムドゲインを使う際の注意点

治療費が上がる

インプラント治療もエムドゲインも、健康保険が適用されない自由診療です。そのため、通常のインプラント費用にエムドゲインの費用が追加されることになり、全体の治療費は高くなります。

効果に個人差がある

エムドゲインは、ご自身の肉体の再生能力を利用する治療法です。そのため、効果の現れ方には個人差があり、年齢や健康状態、生活習慣などによっては、期待したほどの効果が得られない可能性もあります。

骨量不足で諦める前に札幌のインプラントオフィス大通へご相談ください



今回は、インプラント治療でエムドゲインを使う利点についてお話ししました。

エムドゲインは、もともと歯周病治療に使う薬剤として開発された薬です。しかし、これをインプラント治療に使うと、体が本来持つ「治る力」や「骨を作る力」を引き出し、術後の回復を助けたり、骨の再生を促したりする効果が期待できます。

治療費が上がるものの、インプラントの成功を左右する骨の状態をより良くできることを考えると、それを上回るメリットがあると言えるでしょう。

インプラントオフィス大通では、精密な診断を可能にする歯科用CTなど、最新の設備を整え、インプラント治療に精通した、医療法人社団 千仁会専門医たちが患者さん一人一人に対応いたします。

当院の無料相談では、骨造成が必要かどうかといった専門的なご相談も承っておりますので、札幌でインプラント治療をご検討中でしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。