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コラム

ベニアグラフトとは?

2025/6/24


「インプラント治療を考えているけれど、骨が薄いと言われた」
「骨が足りないと、インプラントは諦めるしかないの?」

インプラント治療を検討する中で、このように顎の骨の量に関する不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

インプラントは、これまで様々なインプラントコラムでもお伝えしてきたように、失った歯の代わりに人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、それを土台にして歯を取り付ける治療法です。



インプラント治療を進めるうえで大切な要素の一つに、インプラント体をしっかりと支えるための十分な骨の量が挙げられます。顎の骨がしっかりと安定しているほど、治療後の経過も良好になる傾向がありますが、全ての方が十分な骨の量を保っているわけではありません。

コラムでもご紹介したとおり、もし骨の厚みや幅が足りない時は、骨の量を補うための処置である骨造成が必要になることがあります。この骨造成の方法の一つが、今回ご紹介するベニアグラフトです。

ベニアグラフトの特徴

冒頭でも触れたように、インプラントを安定して埋入するには骨の量が大切です。しかし、歯周病の進行や抜歯後の時間の経過など、様々な理由で顎の骨が薄くなったり、高さが不足することがあり、このような際に骨造成を行います。

骨造成の種類には、サイナスリフトやソケットリフト、GBR(骨誘導再生法)といった方法がありますが、ベニアグラフトは、インプラントを入れる部位と異なる箇所から骨をブロック状に採取し、チタンで作られたビスなどを使い、薄い骨に貼り付けるようにして固定する方法です。

自家骨移植



このように、ご自身の体から採取した骨を移植材として用いることを自家骨移植(じかこついしょく)と呼びます。自家骨は、身体へのなじみが良く、拒絶反応や感染のリスクが比較的低いといった利点があると考えられています。

骨を採取する場所は下顎の奥歯の部分や顎の先端部



ベニアグラフトで移植する骨は、主に下顎から採取されます。奥歯のさらに奥、L字型に曲がっている部分(下顎枝:かがくし)や、顎の先端部分(オトガイ部)などが選ばれるのが一般的です。

これらの場所は、比較的安全に骨造成に必要な量の骨を採取しやすい部位とされています。骨の採取は、局所麻酔を用いて行います。

骨の減少が大きく広範囲な場合に行われる



ベニアグラフトは、骨の吸収が大きい場合や、広範囲にわたって骨を増やす必要がある場合に行われる骨造成です。ブロック状の骨を移植するため、他の骨造成術と比べ、まとまった量の骨を造成しやすいのが特徴と言えるでしょう。

ベニアグラフトの流れ



ベニアグラフトは、インプラントを埋入する手術と同時に行われることもあれば、まず骨を増やす処置を優先し、骨が十分に安定した後にインプラント手術を行うという二段階の手順を踏むこともあります。

まずここでは、一般的なベニアグラフトの手術手順の概要を紹介します。


  1. 自家骨の採取

  2. インプラントを埋め込む

  3. インプラント周囲の骨の薄いところに自家骨を置く

  4. 自家骨とインプラントの隙間に粉砕した自家骨や人工骨などを入れる

  5. 自家骨をビスで止める

  6. 移植した自家骨全体をメンブレンという膜で覆って保護する

実際の治療では、患者さんのお口の状態や治療計画によって、手順の順序や細部が異なる場合がありますので、担当の歯科医師から詳しい説明を受けることが大切です。

ベニアグラフトのメリットは?

インプラントの安定性が向上する



ベニアグラフトを行うと、インプラントの周囲の骨の厚みや幅を増やすことができます。

骨の量が増えることで、人工歯根をしっかりと固定する土台が強化され、インプラントが長期にわたって安定して定着するようになります。

見た目が美しくなる



歯茎のラインは、その下にある骨の形状に大きく影響されます。

特に前歯のような見た目が重視される部位で骨が不足していると、歯茎の高さが不揃いになったり、不自然に後退してしまったりと、何かと審美面での問題が出てきます。下がった歯肉に合わせて人工歯を装着すると、歯肉のラインも整わず、他の歯と比べて違和感も感じるでしょう。

ベニアグラフトによって不足している骨を補い、歯肉のラインも整えることで、歯茎の高さやカーブといった見た目も自然な状態に近づけることができます。

顔に手術痕が残らない



ベニアグラフトで移植に用いる骨は、主にお口の中の歯茎部分を切開して採取します。そのため、お顔の皮膚を切ることはなく、手術の痕が残る心配がありません。

拒絶反応のリスクを減らせる

ベニアグラフトは、患者さんご自身の体の一部から採取した骨(自家骨)を移植材料として使用します。自家骨は身体になじみやすく(生態親和性が高い)、骨として定着しやすい性質を持っています。

また、人工物ではないため、アレルギー反応を引き起こす心配がほとんどありません。そのため、安定しやすい最も優れた移植材と言われています。

ベニアグラフトのデメリットは?

多くのメリットがあるべニアグラフトですが、デメリットがないわけではありません。

治療期間が長くなる



移植した骨が患者さんの体になじみ、人工歯根を支えられる状態になるまでには、およそ6ヶ月ほどの期間が必要です。

この治癒期間を経てからインプラントの埋入手術を行うことも多いため、ベニアグラフトを行わずにインプラント治療を進める場合と比べて、最終的な人工歯が装着されるまでの治療期間が長くなる傾向があります。

また、べニアグラフトの費用がインプラント手術に加算されますので、通常のインプラント治療と比べると、どうしても治療費は高額になります。

身体への負担が大きくなることがある



ベニアグラフトは、インプラントを埋入する予定部位とは別の箇所から、ご自身の骨を採取しなければなりません。

手術箇所が2箇所になるため、手術範囲が広がり、身体への負担(侵襲性)もインプラント手術単独の場合より大きくることが考えられます。

それに伴い、手術後の痛みや腫れが強く出たり、回復に時間がかかったりすることも想定しておく必要があるでしょう。

また、骨を採取する際は細心の注意を払って行われますが、採取する場所の近くにある神経や血管を傷つけてしまう可能性もゼロではありません。例えば、下顎の奥から骨を採取する場合、ごく稀に、下唇に一時的なしびれなどが生じることがあります。

細菌感染を起こすと移植骨が定着しない



移植された直後の骨は、ご自身の体の一部としてまだ完全に定着しておらず、細菌に対する抵抗力が低い状態です。そのため、手術部位の衛生管理が不十分であったり、体の抵抗力が落ちていたりすると、細菌感染を引き起こすことがあります。

移植した骨が安定するまでの6ヶ月ほどの間に、もし移植した骨が細菌に感染した場合、その骨は安定しなくなるため、残念ながら取り除かなければなりません。その後、もう一度骨を採取して移植を試みることになります。

べニアグラフトによって骨の減少を解消



お伝えしてきたように、ベニアグラフトは、ご自身の他の部位から採取した骨(自家骨)を、インプラントを埋め込むために骨量が不足している箇所へ移植する治療法です。

なるべく術後の身体的な負担が少なくなるよう、骨を採取する際には細心の注意を払う必要がありますが、ご自身の骨を移植するため、生態親和性が高く、インプラントの安定性や審美性を高める効果が期待できるという大きなメリットがあります。

ベニアグラフトをお考えの際は、その特徴を理解したうえで治療に臨む必要があるため、インプラント治療に精通した歯科医院を選ぶことをおすすめします。

インプラントオフィス大通は、北海道大学歯学部臨床教授も務める千田理事長のもと、医療法人社団 千仁会専門医が在籍し、骨造成が必要なインプラント治療についても多くの実績がありますので、ご自身の顎の骨の状態に適した治療法を知りたい方は、札幌のインプラントオフィス大通へお気軽にお問い合わせください。